リクライニング位で測った開口量は5mm以上減少する可能性がある
開口量測定は、顎関節症の診断や治療効果の判定において最も基本的かつ重要な検査項目です。測定の精度が診断の正確性を左右するため、標準化された手順を守ることが欠かせません。
測定は座位で行うことが原則とされています。患者さんには背もたれのある椅子に座っていただき、頭部を安頭台でサポートせず、リクライニングもしない姿勢を保ちます。この姿勢が重要な理由は、頭位や体位が開口量に影響を及ぼすためです。研究によると、仰臥位やリクライニング位では重力の影響により下顎の位置が変化し、座位と比較して開口量が減少する傾向があります。特にリクライニング位では5mm以上の差が生じる可能性も報告されており、診断基準の40mmを下回るかどうかの判定に影響を与えかねません。
つまり姿勢の統一が必須です。
背中にクッションやタオルを挟むことで、患者さんがリクライニングしてしまうのを防ぎます。測定時には患者さんに正面を向いていただき、リラックスした状態で最大限に口を開けてもらいます。緊張していると咀嚼筋が過剰に収縮し、実際よりも小さい開口量が測定されてしまいます。
測定器具は、ノギスの内側用クチバシを上下中切歯の切縁に当てて使用します。あらかじめ測定する中切歯の左右側を決めておくと、毎回同じ位置で測定でき、経時的な比較が正確になります。器具が患者さんの身体に触れないよう、ノギスの向きにも注意が必要です。
どういうことでしょうか?
ノギスを顔面や唇に押し付けてしまうと、患者さんが不快感から十分に開口できなくなったり、測定値にばらつきが出たりします。器具は中切歯にだけ接触させ、他の部分には触れないように保持することが基本です。
測定は通常、自力最大開口量(患者さん自身が痛みなく開けられる最大の開口量)を記録します。必要に応じて、術者が強制的に開口させる強制最大開口量も測定しますが、これは関節の可動域を詳しく評価したい場合に限られます。
クインテッセンス出版「開口量の測定」では、測定手順の詳細や注意点について専門的な解説が掲載されています。
開口量測定には、いくつかの専用器具が使用されます。それぞれに特徴があり、測定精度や使いやすさが異なります。
最も一般的なのはノギスです。ノギスは外径・内径・深さなど多用途に使える測定工具で、歯科領域では内側用クチバシを用いて上下中切歯間の距離を測定します。0.1mm単位まで読み取れるバーニア式ノギスや、デジタル表示で瞬時に数値が確認できるデジタルノギスがあります。
デジタルノギスの利点は測定値の読み取りミスが少ない点です。
バーニア式では目盛りの読み取りに慣れが必要で、術者によって若干の誤差が生じることがあります。一方、デジタル式は液晶画面に数値が直接表示されるため、誰が測定しても同じ値が得られやすくなります。ただし、バッテリーの管理や電子回路の故障リスクには注意が必要です。
歯科専用の開口測定器も市販されています。代表的なものに「ギャグゲージMC」や「ヤセック開口度測定器」があります。これらは歯科臨床に特化した設計で、上下中切歯に当てやすい形状になっており、測定時の安定性が高いのが特徴です。特にヤセック開口度測定器は、開口量の計測と同時に開閉口に伴う下顎の偏位も計測できる機能を持ち、顎関節症の詳細な評価に役立ちます。
測定器具を選ぶ際には、以下の点を考慮します。まず測定精度が0.5mm以内であること、次に滅菌または消毒が可能であること、そして患者さんの口腔内に入れても不快感が少ない材質であることです。金属製のノギスは耐久性に優れ、オートクレーブ滅菌が可能ですが、一部の樹脂製測定器はオートクレーブ不可のため、製品仕様を確認しておくことが大切です。
器具の校正も忘れてはなりません。
定期的に標準ブロックゲージなどで測定精度を確認し、誤差が生じていないかチェックします。特に落下させたり強い衝撃を与えたりした場合は、必ず校正を行ってから使用します。測定誤差が1mm以上あると、診断基準の40mmを境界とした判定に影響が出る可能性があります。
実際の測定では、ノギスのジョー(測定面)を上下中切歯の切縁に正確に当て、軽く押し付けすぎないように注意します。過度な力で押し付けると、患者さんが痛みを感じたり、歯が動いたりして、正確な測定ができません。
開口量の基準値は、成人で約40〜50mmとされており、上下中切歯の切縁間距離で測定した場合、40mm以上が正常、40mm未満で開口制限ありと判定されることが一般的です。しかし、この基準値をそのまま全ての患者さんに当てはめるのは適切ではありません。
個人差が存在するからです。
性別による違いもあります。男性では平均48〜55mm、女性では44〜49mm程度とされ、男性の方が開口量が大きい傾向があります。これは顔面の大きさや骨格、筋肉量の違いによるものです。体格の小さい女性や高齢者では、40mmに満たなくても正常範囲内と判断される場合があります。
オーバーバイト(上下前歯の垂直的な重なり)の影響も考慮すべき重要な要素です。オーバーバイトが深いケース、つまり上顎前歯が下顎前歯に深く覆いかぶさっている場合、見かけ上の開口量は小さくなります。例えば、オーバーバイトが5mmある患者さんの場合、切縁間距離が40mmでも、実際の顎関節の可動域はそれより5mm大きいことになります。
オーバーバイトは測定前に確認が必須です。
同様に、下顎頭が短いケースや顔面の構造的特徴によって、もともと開口量が小さい傾向がある患者さんもいます。こうした解剖学的な個人差を無視して40mmという数値だけで判断すると、正常な患者さんを異常と誤診したり、逆に本当に開口障害がある患者さんを見逃したりするリスクがあります。
したがって、基準値は目安として用い、患者さん個々の状態を総合的に評価することが求められます。初診時に測定した開口量を基準値として記録し、その後の経過観察で比較することが実践的です。開口量が過去の値の約1/2に減少している場合や、年々減少傾向がある場合は、たとえ40mm以上あっても注意が必要です。
簡易的な評価方法として「3横指」という指標もよく使われます。患者さん自身の人差し指、中指、薬指の3本を縦に並べて口に入るかどうかを確認する方法で、約40〜45mm程度に相当します。ただし、指の太さには個人差があるため、あくまで目安であり、正確な診断にはノギスなどによる測定が不可欠です。
開口量測定の結果は、単発の数値として見るのではなく、継続的に記録し経時的な変化を追跡することが診断と治療評価において極めて重要です。
多くの顎関節症患者さんでは、開口量の変化が緩徐に進行します。1回の測定では異常が見つからなくても、半年前、1年前の記録と比較すると明らかな減少傾向が見えてくることがあります。この経時的変化こそが、疾患の進行や治療効果を判断する鍵となります。
記録には必ず測定日、測定条件(座位・立位など姿勢)、使用した器具、測定値(mm単位)、オーバーバイトの値、患者さんの自覚症状(痛みの有無、開口時の違和感など)を含めます。これらの情報を診療録に残すことで、複数の歯科医師が関わる場合でも一貫した評価が可能になります。
結論は記録の標準化です。
グラフ化することも効果的な方法です。横軸に時間、縦軸に開口量をプロットすることで、視覚的に変化の傾向が把握しやすくなります。患者さんにもグラフを見せながら説明すると、治療の必要性や効果が理解されやすく、治療へのモチベーション向上につながります。
開口量が急激に減少するケースには特に注意が必要です。例えば、前回測定時に45mmあった開口量が今回35mmに減少している場合、顎関節円板の転位、関節包の炎症、咀嚼筋の痙攣など、急性の問題が生じている可能性があります。このような場合は、ただちに詳細な検査(画像診断、触診、疼痛評価など)を行い、適切な治療介入を検討します。
治療効果の評価でも記録管理は不可欠です。スプリント療法や開口訓練、理学療法などを行った際、開口量がどの程度改善したかを数値で示すことができます。一般的に、治療後に開口量が35mmを超えてくると開口障害が改善傾向にあると判断されます。治療前30mm、治療後38mmというように具体的な数値で示すことで、治療の有効性を客観的に評価できます。
デジタル記録システムの活用も推奨されます。電子カルテに開口量測定の専用フォームを作成し、測定のたびに入力していくと、自動的に経時グラフが生成されたり、過去のデータとの比較が容易になったりします。また、測定値が基準値を下回った場合にアラートを出す設定も可能で、見逃しを防ぐ安全装置として機能します。
慶應義塾大学病院 顎関節症の解説では、開口量測定を含む顎関節症の診断プロセスについて詳しい情報が提供されています。
開口量測定は、顎関節症の診断において他の検査所見と組み合わせて総合的に評価することが重要です。開口量だけで診断が確定するわけではなく、症状の全体像を把握する一要素として位置づけます。
顎関節症の診断基準では、顎関節や咀嚼筋の痛み、顎関節の雑音、開口障害ないし顎運動異常のうち、少なくとも1つ以上を有することが条件とされています。開口量測定はこの「開口障害」を客観的に評価する手段です。
測定の際には、開口経路の観察も同時に行います。
正常であれば、下顎は左右対称に滑らかに開口します。しかし、顎関節症患者さんでは、開口時に下顎が左右いずれかに偏位したり、途中でカクンとずれたり(クリック)、蛇行するような動きを示したりすることがあります。この開口経路の異常は、顎関節円板の転位や下顎頭の動きの非対称性を示唆する重要なサインです。
開口時の疼痛の有無と部位も記録します。最大開口させた際に、顎関節部に痛みが出るのか、咀嚼筋(咬筋、側頭筋など)に痛みが出るのかによって、病態が異なります。関節痛であれば関節包や滑膜の炎症、筋痛であれば筋筋膜性疼痛症候群の可能性が高くなります。
無痛最大開口量と強制最大開口量の差も診断に有用です。患者さんが痛みなく自発的に開けられる開口量(無痛最大開口量)と、術者が手で強制的に開口させた際の開口量(強制最大開口量)に大きな差がある場合、疼痛による開口制限、つまり筋肉の防御性収縮や炎症による痛みが開口を妨げていることが示唆されます。一方、両者の差が小さい場合は、機械的な障害(関節円板の前方転位など)が原因の可能性が高まります。
DC/TMD(顎関節症の診断基準)では、開口量測定を含む標準化された評価方法が提示されています。この診断基準では、無痛最大開口量が40mm未満で、かつ最大自力開口量が40mm未満の場合に開口制限ありと判定されます。複数の評価項目を組み合わせることで、顎関節症のサブタイプ(筋性、関節円板障害性、変形性関節症など)を分類し、適切な治療方針を決定します。
セルフチェックツールとして患者さんに開口量測定を指導することも有効です。自宅で毎日同じ時間帯に開口量を測定し、数値と痛みの程度を記録してもらいます。これにより、日内変動や悪化の兆候を早期に発見でき、受診のタイミングを逃さずに済みます。簡易的な測定器や、スマートフォンの定規アプリを活用する方法もあります。
測定値の記録だけで終わらず、その数値が何を意味するのかを患者さんに丁寧に説明することが、治療への理解と協力を得るために欠かせません。
Please continue.

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