頬粘膜排除器の使い方と選び方

頬粘膜排除器は口腔内スキャナーやホワイトニング、口腔内撮影など多様な歯科診療で欠かせない器具です。適切な器具選択と使用方法で診療効率が大きく変わることをご存知ですか?

頬粘膜排除器とは

間違った頬粘膜排除器の選択で年間20時間以上を無駄にする可能性があります。


この記事の3つのポイント
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頬粘膜排除器の基本と種類

口腔内スキャナー用、撮影用、ホワイトニング用など用途別の器具特性を解説

再撮影を防ぐ選択基準

映り込み防止と圧排機能による診療時間の短縮方法を紹介

患者負担を軽減する使い方

素材選択と装着テクニックで不快感を最小限にする実践法


頬粘膜排除器の定義と役割

頬粘膜排除器は、歯科診療において頬粘膜や口唇を効果的に排除し、明瞭な術野を確保するための器具です。この器具は、口腔内スキャナーでのデジタル印象採得、口腔内写真撮影、ホワイトニング処置、さらには形成時の視野確保まで、多岐にわたる歯科治療場面で活用されています。


特に近年では、デジタル歯科診療の普及により、口腔内スキャナー使用時の頬粘膜や舌の映り込みを防ぐ役割が重視されるようになりました。映り込みが発生すると再撮影が必要となり、診療時間が延長するだけでなく、患者の負担も増加します。適切な頬粘膜排除器の使用により、フルアーチの撮影で通常5~10分程度要する時間を短縮できる可能性があります。


つまり診療効率に直結するということですね。


また、頬粘膜排除器には開口を維持する機能も備わっているものが多く、長時間の処置における患者の疲労軽減にも貢献します。補助者がいない一人診療の場合でも、器具が口角を排除し続けるため、術者は両手を自由に使って処置に集中できるメリットがあります。


頬粘膜排除器の種類と特徴

頬粘膜排除器は大きく分けて、ソフトタイプの開口器とハードタイプのリトラクターの2種類が存在します。ソフトタイプの代表例としてオプトラゲートがあり、ラテックスフリーの柔軟な素材で作られています。この素材は患者の口腔内に長時間装着しても不快感が少なく、装着したまま咬合状態を確認することも可能です。


一方、ハードタイプのリトラクターには、ディープリトラクターやスキャンメイトなどがあります。ディープリトラクターは歯列弓状の圧排部が臼歯部の頬粘膜まで届く設計で、片顎用の製品では上顎右側と下顎左側に対応する#1、上顎左側と下顎右側に対応する#2の2種類が用意されています。形成時にも使用できる強度を持ち、咬合面撮影時に特に有効です。


形成時も使えるのが基本です。


スキャンメイトは、スキャナーの光源に反射しない素材を使用しているため、映り込みが少なく効率的に口腔内を撮影できます。ヘッドの角度を自由に曲げられる設計により、舌および頬粘膜の圧排排除がしやすく、口腔領域の小さい患者にも対応しやすい特徴があります。この柔軟性により、患者ごとの口腔形態に合わせた調整が可能です。


使い捨てタイプのディスポーザブル製品も増えており、ABS素材やポリプロピレン製のものは、オートクレーブ滅菌(121℃対応)が可能なタイプもあります。感染対策の観点から、患者ごとに新しい器具を使用することで、細菌やウイルスの感染リスクを最小限に抑えることができます。


頬粘膜排除器の口腔内スキャナーでの活用

口腔内スキャナーによるデジタル印象採得では、頬粘膜や舌の映り込みが再撮影の主要な原因となります。通常の撮影では下顎・上顎の順で咬合面を中心に連続撮影し、その後に頬側・舌側を45度程度の角度から傾けて補完する手順を取りますが、この際に頬粘膜が写り込むと適切なバーチャルモデルが構築できません。


頬粘膜排除器を使用することで、映り込みのリスクを大幅に低減できます。特に臼歯部の撮影では、頬粘膜を確実に排除しないと視野が制限され、複数回の再撮影が必要になることがあります。再撮影が1回発生するごとに2~3分の時間ロスが生じるため、1日10件のスキャン撮影を行う診療所では、月間で相当な時間が無駄になる計算です。


これは使えそうです。


口腔内スキャナー専用に設計された頬粘膜排除器は、スキャナーチップの挿入を妨げない形状になっており、撮影の邪魔にならない設計が施されています。また、患者が自分で把持できるハンドル付きのタイプもあり、歯科衛生士の介助が不要な場合でもスムーズに撮影を進めることが可能です。


口腔内スキャナーの導入率は全国でまだ5~10%程度と言われていますが、今後の普及に伴い、専用の頬粘膜排除器の需要も高まることが予想されます。特に一人診療を行う開業医にとっては、効率的な診療を実現するための必須アイテムとなるでしょう。


口腔内スキャナーの使い方とコツについて、詳細な撮影手順と圧排の重要性が解説されています


頬粘膜排除器のホワイトニングと口腔内撮影での使用

ホワイトニング処置では、薬剤が粘膜に付着すると炎症を引き起こすリスクがあるため、確実な粘膜保護が必要です。頬粘膜排除器を使用することで、手指による排除が不要となり、長時間の処置でも患者の口唇の震えを防ぎ、快適性を保つことができます。オプトラゲートのようなソフトタイプの開口器は、ホワイトニング時に特に推奨されています。


口腔内写真撮影においては、エバポーレイテッドミラーと頬粘膜排除器を併用することで、撮影したい範囲をすべてしっかりと捉えることができます。口腔内撮影では12枚法が一般的ですが、唇全体を排除するための大きい口角鉤と、前歯部を撮影する際の小さい口角鉤を使い分けることで、より鮮明な記録写真を撮影できます。


記録写真の質が向上します。


口角鉤を使用する際は、3wayシリンジなどで濡らしてから装着するとスムーズに口角にかけることができます。ただし濡らしすぎると水が滴り、患者に不快感を与えてしまうため注意が必要です。適度な湿潤状態を保つことで、装着時の摩擦を減らし、患者の負担を軽減できます。


矯正治療のブラケット装着時や、治療経過の記録撮影においても、頬粘膜排除器は一人でも記録写真を撮影できる環境を提供します。補助者なしで口角を排除し視野を確保できるため、人員が限られた診療環境でも質の高い記録を残すことが可能です。


頬粘膜排除器の選び方と感染対策

頬粘膜排除器を選択する際は、使用目的に応じた器具特性を理解することが重要です。口腔内スキャナー使用時は映り込み防止機能を持つもの、ホワイトニングでは患者の快適性を重視したソフトタイプ、形成時には強度のあるハードタイプというように、処置内容に合わせた選択が診療効率を左右します。


材質の観点では、ラテックスフリーの製品を選ぶことでアレルギーリスクを回避できます。オプトラゲートをはじめとする多くの製品がラテックスフリー素材を採用しており、患者を選ばずに使用できる利点があります。また、柔軟性と弾力性を兼ね備えた素材は、上唇小帯・下唇小帯が当たる部分にくぼみを備え、患者の不快感を軽減する設計となっています。


患者も痛みを感じにくいです。


感染対策の面では、使い捨てタイプのディスポーザブル製品の採用が推奨されます。一度使用したら再利用せず廃棄することで、細菌やウイルスの感染リスクを最小限に抑えることができます。再利用タイプの器具を使用する場合は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)による滅菌処理が必須です。121℃で3分間の滅菌を行うことで、B型肝炎ウイルス(HBV)を含む病原体を死滅させることができます。


器具の洗浄・消毒・滅菌のプロセスでは、血液・体液などの有機物が残っていると効果が十分に得られないため、消毒や滅菌の前に必ず洗浄を行う必要があります。ウォッシャーディスインフェクターを使用する場合は、内腔が細い器具類の内部に水分が残らないよう、清浄な圧縮空気等で完全に除去してから滅菌を行います。


サイズ展開も選択基準の一つで、オプトラゲートではレギュラー、スモール、ジュニアの3サイズが用意されています。小児や口腔領域の小さい患者には小さめのサイズを選ぶことで、装着感を改善し、不快感を最小限に抑えることができます。適切なサイズ選択により、長時間の処置でも患者の協力を得やすくなります。


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