斑状歯(歯のフッ素症)は、歯の形成期に高濃度フッ化物を継続的に摂取することで発生するエナメル質の発育不全です。日本では出生から満8歳までの永久歯形成期間が特に重要な時期となり、この期間に1.0ppm以上のフッ化物を含む飲料水を継続摂取することが主な原因になります。
診断は視診を中心に行われます。歯科医は斑点の特徴として「左右対称性」「水平的な縞模様」「白濁または茶色の着色」「光沢がない質感」といった所見を観察することから始めます。これらの特徴が認められた場合、患者の病歴や生活歴(フッ素摂取状況、乳幼児期の高熱疾患、栄養状態)を詳細に問診することで診断精度を高めることができます。
重要な点は、初期虫歯(脱灰)との鑑別診断です。初期虫歯のホワイトスポットは歯の清掃状態が悪い部分(歯根部や歯間)に限定されるのに対し、斑状歯は全体的に分布するという違いがあります。また初期虫歯は表面にツヤがなくマットな質感を示す傾向があります。
斑状歯の治療法は、症状の重症度と患者の審美的要望によって多段階に分かれます。軽度から中程度の白濁であれば、削らない治療を優先させることが患者の歯質を長期的に保存する観点から推奨されます。
保険診療として認められるのは、白斑が初期虫歯と診断された場合のみに限定されます。この場合、フッ化物塗布(950ppm程度)や生活指導を中心とした進行防止療法が保険適用で実施できます。月1~3回の定期的なフッ素塗布により、再石灰化を促進し初期段階での改善が期待できます。
ただ保険診療の限界も存在します。確実な効果を期待する場合は自費診療の選択肢を検討する必要があります。実は、日本の保険診療では斑状歯そのものへの治療が制限されているため、患者が「美しく治したい」という要望を持つ場合、歯科医が複数の治療選択肢を提示できるかどうかが診療の質を左右するのです。
2020年代に国内導入が進むICON治療は、ドイツのDMG社が開発した浸透性レジン療法です。この治療は白濁部分に直接特殊な樹脂を浸透させ、光の屈折率を均一化することで白斑を目立たなくさせる方法です。費用は歯1本あたり10,000~30,000円で、施術時間は約20~30分程度に収まります。
ICON治療の最大のメリットは「歯を削らない」点です。従来のエナメルマイクロアブレージョン(6,000~10,000円)では表面を100~200μ研磨するため、理論上は再発の可能性が低い一方で、歯質を失うという不可逆的なデメリットがあります。これに対しICON治療は歯質温存が前提であり、将来的な別の治療選択肢を残すことができます。
ただしICON治療には適応限界があります。白斑が深くエナメル質内深くまで及んでいる場合や、茶色い着色が強い場合(ブラウンスポット)については効果が限定的です。こうした症例では事前にティースポリッシングを組み合わせることで、治療効果を高めることができます。つまり「削らない=何もしない」ではなく、段階的なアプローチが重要です。
再石灰化療法は初期虫歯やエナメル質形成不全の初期段階に特に有効です。MIペースト(カルシウムリン酸塩含有)やフッ化物ジェル(9,000ppm高濃度)を週1~2回塗布することで、ミネラルの再沈着を促進します。この治療は即効性はありませんが、3~6ヶ月の継続により白濁が薄くなる症例が50~70%程度報告されています。
斑状歯は発症後の治療が中心になりがちですが、実は予防段階での対応が最も重要です。乳幼児期における過度なフッ素摂取の回避が第一義的な対策となります。日本で推奨されるフッ素濃度は以下の通りです:歯磨き粉は1,000~1,500ppm、フッ素洗口は100~225ppm、が安全とされる範囲です。
特に注意が必要なのは、複数のフッ素含有製品の併用です。歯磨き粉(1,000ppm)とフッ素洗口(225ppm)の同時使用が当たり前になっている家庭では、意図せず過剰摂取になるケースが報告されています。患者教育時には「フッ素は予防に有効だが、過剰は有害」というバランス感覚を伝えることが歯科医の重要な役割です。
また診療現場では、既に斑状歯が発症した患者に対する心理的配慮も必要です。保護者が「フッ素塗布を受けさせたから」と自責感を感じるケースが多いため、「高濃度フッ化物の継続的な飲用による症状で、定期的な塗布では発症しない」という正確な情報提供が患者信頼構築につながります。
患者が審美的改善を強く望む場合、オフィスホワイトニングとICON治療の組み合わせが有効な場合があります。白濁が軽度~中程度であれば、ホワイトニングで周囲の歯を白くすることで相対的に白斑を目立たなくさせるアプローチが機能します。
重要な注意点として、ホームホワイトニングは斑状歯患者には不適切です。ホームホワイトニングではマウスピースが均一に密着しにくく、白斑部分が浮きやすいため、かえって目立ってしまう現象が報告されています。この場合「ホームホワイトニングを避け、先にICON治療を行ってからオフィスホワイトニングを実施する」という段階的なプロトコルが推奨されます。
また矯正治療中の斑状歯患者には追加の配慮が必要です。矯正装置周囲の白濁(White spot lesion)が高頻度で報告されているため、既に斑状歯がある患者では矯正中のホワイトニングは控えるべきです。むしろ矯正終了後、安定期を待ってから計画的に治療を開始する方が患者満足度につながります。
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## 参考資料
【斑状歯の診断分類・重症度評価】日本歯科医学会の分類では、Thylstrup-Fejerskovスコア(TFスコア)が国際的に採用されており、歯科医院での診断の参考になります。
【ICON治療の臨床エビデンス】ドイツDMG社の開発資料によれば、軽度~中程度の白斑に対して75~85%の改善率が報告されており、削らない治療としての有効性が確認されています。
【患者教育における情報提供】フッ素摂取基準と斑状歯発症メカニズムについては、厚生労働省e-ヘルスネットが詳細に解説しており、患者説明資料の根拠となります。
【ホワイトスポット治療の多段階アプローチ】段階的治療プロトコルについては、米国審美歯科学会(ASDA)認定医による実践的なアプローチが参考になります。
深沢歯科「ホワイトスポット(白斑)が歯にできる原因と目立たなくする方法」
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