歯根嚢胞手術は生命保険対象外が多数派

歯根嚢胞の手術を受けたのに、生命保険から給付金がもらえないのはなぜ?歯科診療報酬と医科診療報酬の違いを理解することで、患者説明の精度が高まります。保険適用される手術、されない手術の線引きとは何か、徹底解説します。

歯根嚢胞の手術と生命保険の給付:診療報酬による支払い可否の分岐

歯根嚢胞摘出手術は医科診療報酬点数表に掲載されていないため、ほぼすべての生命保険会社で手術給付金の支払対象外です。


歯根嚢胞手術と生命保険給付の重要ポイント
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支払対象外の理由:診療報酬の分類

歯科診療報酬にのみ掲載されている手術は、医科診療報酬に存在しないため、生命保険会社が定める支払基準を満たさない

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保険会社ごとの基準の違い

主流は医科診療報酬点数表の掲載有無で判定。一部会社は異なる基準を採用しており、給付される可能性あり

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患者への診療報酬説明の必要性

診療報酬の分類が給付の可否を左右する仕組みを事前に説明することで、患者トラブルを大幅に削減可能


歯根嚢胞摘出手術が保険給付対象外となる医科診療報酬の基準

大多数の生命保険会社は、手術給付金の支払対象を「医科診療報酬点数表で手術料が算定される手術」に限定しています。歯根嚢胞摘出手術(J003)は歯科診療報酬点数表にのみ掲載されており、医科診療報酬点数表には存在しません。この分類の違いが、多くのケースで給付対象外となる根本的な理由です。


住友生命やオリックス生命、東京海上日動あんしん生命など大手保険会社の約款では、「歯根嚢胞摘出術、歯根端切除術」を明示的に支払対象外と記載しています。実は生命保険会社は患者からの給付請求に基づいて、診療報酬を参照しながら査定を進めます。医科診療報酬に該当しない手術は、どれほど正当な医学的治療であっても給付の道が閉ざされやすいのが現状です。


歯科診療報酬と医科診療報酬の二重構造が引き起こす患者負担

日本の診療報酬は医科と歯科に分かれており、同じような手術であっても片方にしか掲載されていない場合があります。歯根嚢胞摘出手術の場合、歯科では大きさに応じて800点から2,040点まで設定されていますが、医科には相当する手術コードがありません。つまり患者が健康保険で治療費を支払う際は歯科診療報酬を適用されても、生命保険の給付申請時には医科診療報酬を基準とされるというジレンマが発生するわけです。


しかも厄介なのは、保険会社間でこの判定基準が統一されていない点です。たとえば一部の生命保険会社では「歯科診療報酬で手術料が算定されれば給付対象」と判断するケースもあり、同じ手術を受けても給付される場合とされない場合が混在しています。患者からすれば「なぜ?」という疑問しか残りません。


歯根嚢胞摘出手術が給付対象となるわずかなケース

完全に給付が受けられないわけではありません。歯根嚢胞摘出手術が手術給付金の対象となるケースとしては、以下の条件が挙げられます。


まず、保険会社が医科診療報酬を基準としていなく、独自の手術リストを採用している場合です。プルデンシャル生命など一部の生命保険会社では、歯根嚢胞開窓術(シコンノウホウカイソウジュツ)を手術給付倍率表に掲載し、給付倍率を20倍(基本給付額の20倍の給付金)と設定しています。つまり同じ歯科手術でも、保険会社次第で給付される可能性は存在します。


次に、入院を伴う場合です。歯根嚢胞が大きく(鶏卵大以上の場合など)、全身麻酔が必要で入院が必要になれば、手術給付金は受け取れなくても入院給付金の対象となることがあります。入院給付金は医科診療報酬ではなく、入院という事実そのものが支払要件になるためです。患者が一泊以上の入院をした場合、多くの保険会社が入院給付金を支払います。


これだけは覚えておけばOKです。


診断書作成と保険請求プロセスで明確にすべき情報

患者が生命保険の給付を申請する場合、医療機関が発行する診断書が重要な役割を果たします。診断書には「手術内容」「手術を行った診療科」「手術料算定の有無」といった記載項目があり、生命保険会社はこれらの情報から給付可否を判定します。


実務的には、患者に対して治療前に「この手術は生命保険の給付対象外になる可能性が高い」と伝えることが極めて重要です。多くの患者は医療機関で手術を受ければ自動的に保険給付されると勘違いしており、手術後に「給付されなかった」とのトラブルに発展することも少なくありません。診療報酬の二重構造を簡潔に説明し、書面で記録に残しておくことが後々のトラブル防止につながります。


つまり〇〇です。


生命保険給付の対象となる歯科手術との比較:埋伏歯抜歯とのすみ分け

生命保険が給付対象とする歯科手術と、対象外とする手術の線引きは、医科診療報酬への掲載有無です。たとえば埋伏歯(埋まった親知らずなど)の抜歯は医科診療報酬にも掲載されており、一定条件下で手術給付金の対象となります。これに対して単純な虫歯による抜歯は医科診療報酬に存在せず、給付されません。


含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)というケースがあります。親知らずを抜く予定だったが、X線検査で嚢胞が見つかり「含歯性嚢胞摘出術」として手術した場合、これは給付される可能性があります。理由は、この手術が医科診療報酬に掲載されているからです。つまり手術の医学的難易度ではなく、診療報酬表への掲載有無が判定基準になっているわけです。


意外ですね。


患者から「親知らずの時に見つかった嚢胞摘出で給付金が出た。歯根嚢胞摘出では出ないのか」という質問が来ることもあります。この矛盾を患者に説明する際には、「医科診療報酬表の掲載有無という形式的な基準で判定されている」と伝えるしかありません。同じ嚢胞摘出でも手術の性質や部位によって生命保険の給付対象が分かれるのが現実です。


患者説明資料化と保険給付の事前確認プロトコル

診療現場で患者トラブルを減らすには、手術前の説明を文書化することが効果的です。一般的には治療同意書に「この手術は生命保険の給付対象外となる可能性がある」と明記し、患者の署名を取得します。さらに詳しい説明を望む患者には、診療報酬の仕組みや保険会社ごとの判定基準の違いを説明したハンドアウトを用意するのも良策です。


患者が加入している保険会社が明確であれば、手術前に保険会社に「この手術は給付対象か」と照会することも可能です。保険会社側も「支払査定時照会制度」により、医療機関からの事前確認に応じる体制を整えています。手術前に給付可否が判明すれば、患者の期待値調整ができ、後のトラブルを未然に防げます。


これが条件です。


治療費の自己負担額が診断書作成費(5,000円から8,000円程度)より少ない場合、給付請求そのものが経済的に非効率になることもあります。患者に対して「給付請求するかどうかの判断基準」についても事前に伝えておくと親切です。患者が納得した上で治療を進めることが、医療機関と患者の信頼関係を強化します。


参考:保険給付の根拠となる診療報酬表の確認
歯科診療報酬点数表:J003歯根嚢胞摘出手術の点数(歯冠大800点〜鶏卵大2,040点)が掲載されており、医科診療報酬には同等の手術コードが存在しないことが生命保険給付対象外の理由になります


参考:大手保険会社の支払基準の確認
住友生命の約款では「歯根嚢胞摘出術、歯根端切除術」を明示的に支払対象外手術として記載しており、医科診療報酬基準の採用を示唆しています


参考:例外的に給付される手術の基準
手術や入院を伴う場合は手術・入院給付金の対象となる可能性があり、先天性疾病や不慮の事故による歯の手術は保険給付を受けられる可能性があります