あなたが見落としている整復術の算定機会は、月に最大3回以上の実績を失っています。
顎関節脱臼非観血的整復術は、歯科診療報酬点数表の手術料にJ077として登録されており、410点が片側につき算定されます。これは医科のK430と対応するコードですが、歯科領域で最も頻繁に対応する手術のひとつです。
実際の臨床現場では、患者が突然「顎が外れた」と来院し、徒手的な整復操作で脱臼を元の位置に戻す場面があります。この整復操作こそがJ077の算定対象となる処置です。麻酔の使用有無にかかわらず、整復術を実施した時点で算定が認められます。
多くの歯科医院では月に1~2回程度の脱臼患者の対応が一般的ですが、なかには同じ患者が月に3回以上整復が必要な習慣性脱臼のケースもあります。これらの患者でも毎回算定が可能であり、回数制限は存在しません。ここが多くの医院で見落とされているポイントです。
顎関節脱臼が両側に生じた場合、算定ルールは非常にシンプルです。片側につき410点という通知に基づき、左右両側に整復を行った場合は410点×2で820点を算定できます。
実例を挙げると、あごが外れた患者で左右両側が同時に脱臼していた場合、1回の来院で両側を整復すれば820点です。一方、初日は左側のみ脱臼で410点、数日後に右側が脱臼して再度整復した場合、2回の来院で合計820点となります。
どちらのシーンでも正規の算定が可能です。
ただし、レセプト審査で注意が必要な点があります。病名記載時には「顎関節脱臼(左側)」「顎関節脱臼(右側)」と明確に区別することが返戻を防ぐコツです。片側を示す病名記載がなければ、査定される可能性があります。
整復が成功するためには、患者の筋肉の緊張を緩和することが重要です。多くの場合、局所麻酔や消炎鎮痛薬を用いて対応しますが、患者の強い希望や緊急時には無麻酔で整復することもあります。
この無麻酔での徒手整復であっても、J077の算定に何ら支障はありません。つまり、整復術が行われたという事実が最も重要であり、その過程で麻酔を使ったか使わなかったかは点数算定に影響しないのです。
実際に寄せられた質問では「麻酔を使用せずに徒手整復した場合でも点数算定可能か」という不安の声がありますが、答えは「可能」です。むしろ習慣性脱臼の患者のなかには、短時間で整復が終わるため無麻酔で対応することを希望する方もいます。
ただしレセプト記載の際には、麻酔薬を使用せず実施した場合でもその事実を明記すると、査定対象外になりやすいという現場報告もあります。コメント欄に「無麻酔徒手整復」と記載する工夫が有効です。
習慣性脱臼とは、同じ患者が繰り返し顎関節脱臼を発症する状態を指します。最初の脱臼から2週間~1ヶ月程度の固定で対応しても、再び脱臼を繰り返す症状です。
歯科業界では「習慣性顎関節脱臼」という診断名が使用されます。この患者群では月に複数回(3回以上のケースも)の整復が必要になるケースが珍しくありません。重要なのは、この状況でも毎回410点の算定が可能であるという点です。
例えば、同一患者が1ヶ月間に3回整復が必要だった場合、3回すべてJ077を算定できます。つまり1,230点(410点×3回)の手術料が発生します。一部の医院では「同じ患者は月1回のみ」という誤った理解をしていることがありますが、これは医学的根拠がありません。
習慣性脱臼の患者を管理する際には、整復のたびに適切にレセプト記載し、後療法として顎帯による固定や口腔内装置の装着も並行することが多いです。これらの保存療法と整復術を組み合わせることで、患者の再脱臼リスクを低減させながら、適正な算定を実現できます。
臨床現場での緊急的な質問として「整復を試みたが失敗してしまった場合、点数は算定できるのか」という問題があります。これは多くの医院で判断が分かれるポイントです。
結論から言うと、整復術自体を実施した場合、その結果として成功したか失敗したかは算定に影響しないというのが一般的な解釈です。つまり、整復操作を行ったという医学的事実が点数算定の要件になります。
ただし、その場合のレセプト記載には十分な注意が必要です。病名として「顎関節脱臼」と記載し、実施した処置として「非観血的整復術施行」と明記することが推奨されます。さらに摘要欄に「整復不成功のため高次医療機関に紹介」といった経過を記載すれば、査定のリスクが大幅に低減されます。
整復不成功から観血的手術への転換が必要になった場合、J078の顎関節脱臼観血的手術(26,210点)が新たに算定されることになります。両者は別の手術コードであり、同日実施した場合でも両立しうるケースもあります。
愛知県社会保険医療協議会による歯科保険請求Q&A(両側脱臼の算定根拠)
厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項」(習慣性脱臼での顎帯固定の規定)
日本顎関節学会「顎関節脱臼のQ&A(医療関係者へ)」(臨床対応の参考資料)

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