鋳造公差CTの等級・数値・図面指示を完全解説

鋳造公差CTとは何か、等級の選び方から図面への指示方法まで解説します。CT等級を正しく理解しないと、加工コストや不良率に直結することをご存知ですか?

鋳造公差CTの等級・数値・図面指示の完全ガイド

CT等級を1段階間違えるだけで、加工費が30%以上跳ね上がることがあります。


この記事のポイント3選
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鋳造公差CTとは何か?

ISO 8062に基づく国際規格で、CT1〜CT16の16等級が存在します。等級数値が小さいほど厳しい公差です。

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鋳造方法とCT等級の対応関係

砂型鋳造はCT8〜CT13、ダイカストはCT4〜CT8が標準域です。工法選定を間違えると要求公差を満たせません。

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図面への正しい指示方法

「CT8 ISO 8062」のように等級番号と規格番号を併記するのが国際標準です。指示漏れはクレームの原因になります。


鋳造公差CTの基本:ISO 8062規格と16段階の等級体系

鋳造公差CTとは、ISO 8062(JIS B 0403)によって定められた鋳造品の寸法公差規格です。CTは「Casting Tolerance」の略で、CT1からCT16までの16段階で構成されています。等級数値が小さいほど公差が厳しく、数値が大きいほど公差が緩くなります。


つまり、CT1が最も高精度な等級です。


この規格が定められた背景には、各国・各メーカーがバラバラな公差基準を使っていたことで生じた国際取引上の混乱があります。統一規格としてISO 8062が制定されたことにより、図面上に「CT〇〇」と記載するだけで、製造国や鋳造業者が異なっても同一の品質基準を共有できるようになりました。これは国際調達が増えた現代の金属加工現場では非常に重要な意味を持ちます。


CT等級は「基準寸法の区分」と「等級番号」の組み合わせで許容差の値が決まります。例えば基準寸法が100mmの場合、CT8では許容差が±1.4mm程度、CT10では±2.2mm程度となります。この差は一見小さく見えますが、嵌め合い部品や機械加工の取り代設定に大きく影響します。


数字だけ覚えておけばOKです。


実務で特に注意したいのは、CT等級が公差の「幅」を示すものであって、上下の振り分け(プラス側・マイナス側への偏り)は別途指定が必要だという点です。規格では対称振り分けが基本ですが、機能上どちらかに偏らせたい場合は図面に明示する必要があります。


JIS B 0403(鋳造品の寸法公差及び削り代)の規格内容の確認はこちら(kikakurui.com)


鋳造公差CTの等級と鋳造工法の対応:砂型・ダイカスト・精密鋳造の比較

鋳造工法によって達成可能なCT等級の範囲は大きく異なります。これを理解せずに図面公差を決めると、製造不能な仕様を要求してしまう危険があります。


以下に主要な鋳造工法と標準的なCT等級の対応をまとめます。


鋳造工法 標準CT等級範囲 特徴
砂型鋳造(生砂) CT11〜CT14 最も汎用的。大型品に対応するが精度は低め
砂型鋳造(自硬性砂) CT8〜CT12 中〜大型品。生砂より精度向上
ダイカスト(亜鉛・アルミ) CT4〜CT8 高精度・高速量産に適する
精密鋳造(ロストワックス) CT4〜CT6 複雑形状・高精度に対応。コスト高
低圧鋳造 CT6〜CT10 アルミ合金向け。引け巣が少ない


これは実務で使えそうです。


砂型鋳造でCT7を要求する図面を出してしまうケースが現場では少なくありません。砂型の標準達成域はCT8以上ですから、CT7を要求された鋳造業者は特別な管理工数を追加する必要があり、これが見積り金額の跳ね上がりにつながります。逆に、ダイカストで問題なく達成できる公差にもかかわらず、過去の社内標準図面を流用して「CT11」と記載してしまうと、受け入れ検査で合格範囲が広すぎて後工程の機械加工に支障が出ることもあります。


工法と等級の対応関係が条件です。


さらに見落とされがちな点として、同じ砂型鋳造でも鋳造品の「最大外形寸法」によって達成できるCT等級は変わります。大型品(最大外形1000mm超)では型の変形・収縮が大きくなるため、同じ砂型でも小型品より1〜2等級分だけ公差が緩くなります。設計段階からサイズと工法を紐づけてCT等級を設定する習慣をつけると、後工程でのトラブルを大幅に削減できます。


鋳造公差CTの数値表の読み方と許容差の計算方法

CT等級の数値表を正しく読むためには、「基準寸法の区分」と「等級」の交点で許容差を確認するという手順を理解する必要があります。ISO 8062の数値表では、基準寸法が例えば「63mmを超え100mm以下」といった区分で分類されており、それぞれの区分に対してCT1〜CT16の許容差(単位:mm)が記載されています。


以下に代表的な基準寸法区分とCT等級の許容差(全幅、±に分ける前の値)の抜粋例を示します。


基準寸法区分 CT6 CT8 CT10 CT12
~10mm 0.36mm 0.56mm 0.9mm 1.4mm
10〜16mm 0.38mm 0.60mm 1.0mm 1.6mm
63〜100mm 0.54mm 0.86mm 1.4mm 2.2mm
250〜400mm 0.78mm 1.2mm 2.0mm 3.2mm


この許容差は「全幅」の値です。対称振り分けの場合は2で割った値が±の値になります。例えば基準寸法100mm、CT8の場合、許容差全幅は0.86mmですから、±0.43mmが各方向の許容値となります。


±0.43mmというのは、直径2mm程度のシャープペンシルの芯の太さに近い量です。鋳造品としてはかなり厳しい精度要求であることが、この比較でイメージできます。


計算の手順が基本です。


実務上の計算でよく使うのが「削り代(削り代RMA:Required Machining Allowance)」との組み合わせです。鋳造後に機械加工を前提とする面には、CT等級の公差に加えてRMAを別途付加した状態で鋳造品を作る必要があります。RMAの値もISO 8062に規定されており、削り代等級A〜Hの8段階で管理されます。CT等級とRMAの両方を図面に指示することで、鋳造業者・加工業者双方が共通認識のもと作業を進められます。


図面への鋳造公差CT指示方法:記載ミスがクレームを招く落とし穴

鋳造公差CTを図面に正しく記載することは、製造品質を担保する上で最も基本的な作業の一つです。しかし現場では記載方法のミスや曖昧な指示が原因でクレームや手戻りが発生するケースが後を絶ちません。


正しい図面指示の基本書式は次のとおりです。


```
一般公差:CT8 ISO 8062
削り代:RMA-E ISO 8062
```


このように等級番号と規格番号を一緒に記載するのが国際標準です。CTの数値だけでは「どの規格のCTか」が不明確になるため、ISO番号の併記が必要です。特に海外鋳造業者への発注時や、複数規格が混在するプロジェクトでは、規格番号の明示が解釈違いをぐ唯一の手段になります。


規格番号の明記が原則です。


よくある記載ミスのパターンを整理すると、①CT等級の数値だけを記載してISO番号を省略している、②削り代指示(RMA)が抜けている、③一般公差としてCTを指定しながら特定の面だけ個別公差が入っており両者の優先順位が不明確、の3つが特に多いです。


③のケースは見落としやすいので注意が必要です。


一般公差としてCT等級を表題欄付近に記載した場合でも、個々の寸法線に記載された公差値はそちらが優先されます。これは機械加工品の一般公差(例:JIS B 0405)と同じ考え方ですが、鋳造品では機械加工後の仕上げ面と鋳肌面が混在するため、どの面がCT等級の適用範囲でどの面が個別指示かを明確に区別しないと、検査基準が曖昧になります。


鋳造公差CTの等級選定:コストと品質を両立するための独自視点

CT等級の選定は「厳しければ厳しいほどよい」という発想で行われがちですが、これは大きな誤解です。CT等級を1段階厳しくするごとに、鋳造工程での管理コスト・不良率・特殊工法への移行リスクが積み重なります。


厳しすぎる公差は損失の原因です。


実際の設計現場でよく起きる問題が「機械加工余裕を確保しようとしてCT等級を緩め、その結果として削り代が多くなり、材料費と加工時間が増大する」という矛盾です。鋳肌のまま使用する面(鋳肌面)については、必要以上に厳しいCT等級を要求するよりも、機能上許容できる最も緩いCT等級を選ぶことで、トータルコストを最適化できます。


一方、機械加工を前提とする面については、削り代が最小限になるよう鋳造精度を上げる方が後工程の加工コストを下げる効果があります。ここでCT等級を緩めすぎると、削り代のバラつきが大きくなり、加工プログラムの設定が難しくなります。この「鋳肌面は緩く、加工面は適正に」という使い分けが、コストと品質を両立する実践的な考え方です。


使い分けが重要ということですね。


また、あまり語られない視点として「量産フェーズとプロトフェーズでCT等級を変える」という方法があります。プロトタイプ段階では砂型鋳造でCT11程度で製作し、形状・嵌め合いの確認を優先します。量産移行時にダイカストへ工法変更してCT6〜8に移行することで、初期投資を抑えつつ量産品質を確保できます。この移行計画を設計初期から織り込んでおくと、後から図面を大幅に変更する手間を省けます。


🔧 CT等級の選定で迷ったときは、鋳造業者へ「標準達成等級の確認」を依頼するのが最も確実です。多くの業者は工法ごとの標準CT等級を技術資料として持っており、設計者が一方的に決めるより、製造側と合意した等級を図面に反映させる方が現実的です。


日本鋳造協会(鋳造工法・品質基準に関する技術情報が掲載されている業界団体サイト)


鋳造公差CTに関するJIS・ISO規格の改定ポイントと実務への影響

ISO 8062は過去に複数回の改定が行われており、現行版はISO 8062-3:2007です。日本国内ではJIS B 0403として整合化されています。旧版との主な違いは、公差等級の呼び方の変更や削り代等級の体系整理にあります。


改定前の旧規格(ISO 8062:1994以前)では、公差等級の表記方法や数値表の構成が現行版と異なる部分があります。古い図面や過去の社内標準を参照する際には、適用規格のバージョンを確認することが重要です。旧規格を前提に作られた図面に現行ISO 8062の公差表を当てはめると、数値がずれるケースがあります。


これは意外ですね。


具体的に変わったポイントとして、旧規格では「グレード」と呼ばれていた等級が現行では「CT等級」に統一されたこと、削り代の規定が独立したパートとして整理されたこと(ISO 8062-3のパート構成)、そして公差値そのものも一部の寸法区分で微修正が入っていることが挙げられます。


実務上の影響として最も注意が必要なのは、長期間使い続けている社内標準図面です。10年以上前に作成された図面では旧規格参照のケースがあり、調達先の変更や海外発注時に解釈の齟齬が生まれます。年に1回でも社内図面標準の規格バージョンを見直す運用を入れておくと、こうしたリスクを低減できます。


定期見直しが条件です。


また、ISO 8062には幾何公差(形状・位置公差)の適用については含まれていない点も覚えておく必要があります。鋳造品の平面度・直角度などを管理したい場合は、CT等級とは別にISO 1101(JIS B 0021)に基づいた幾何公差指示が必要です。CT等級だけ指定すれば寸法品質はすべてカバーできると思い込むのは危険です。CT等級の適用範囲が原則です。


JIS B 0403(鋳造品の寸法公差及び削り代)の最新規格確認は経済産業省JISCデータベースから