超音波スケーラー 一覧と歯石除去の効果的テクニック

歯科医療現場で活躍する超音波スケーラーの種類や特徴を詳しく解説。マグネット式とピエゾ式の違い、適切なチップ選択、効果的な使用方法まで網羅しています。あなたのクリニックに最適な超音波スケーラーはどれでしょうか?

超音波スケーラー 一覧と特徴

超音波スケーラーの基本情報
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振動数

毎秒25,000~50,000Hz程度の高周波振動

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作用機序

振動と注水による歯石の粉砕・除去

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主な種類

マグネット式(磁歪型)とピエゾ式(圧電型)

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超音波スケーラーは、歯科医療現場において歯石除去に欠かせない機器です。手用スケーラーと比較して、効率的に歯石を除去でき、術者の疲労軽減にも貢献します。現在、歯科医院で使用されている超音波スケーラーは主に2種類あり、それぞれ特徴が異なります。本記事では、超音波スケーラーの種類や特徴、効果的な使用方法について詳しく解説します。

 

超音波スケーラーの種類とメーカー別一覧

超音波スケーラーは大きく分けて、マグネット式(磁歪型)とピエゾ式(圧電型)の2種類があります。現在の市場ではピエゾ式が主流となっており、マグネット式はデンツプライシロナ社のキャビトロン®シリーズのみとなっています。

 

主要メーカーと製品の一覧は以下の通りです。

  1. Woodpecker(ウッドペッカー)
    • UDS-E LED超音波スケーラー(ボトル付き):53,800円
    • UDS-E超音波スケーラー(ボトル付き):50,000円
    • DTE-D7-LED超音波スケーラー:50,000円
    • DTE-D5 LED超音波スケーラー(SATELEC兼用)
  2. Vrn(ブイアールエヌ)
    • A8超音波スケーラー(無線制御)LED付きハンドピース:53,000円
    • DA-10 + LEDハンドピース(Woodpecker EMS対応):33,000円
  3. メクトロン社/東京歯科産業
    • マルチピエゾ:超音波スケーラーとエアポリッシャーを兼ね備えたオールインワン治療器
  4. デンツプライシロナ
    • キャビトロン®シリーズ(マグネット式)

これらの製品は、LEDライト付きのハンドピースや、水供給システムの違い、操作性、価格帯などで選択することができます。特にWoodpeckerの製品は4万円台から購入できる高機能モデルがあり、コストパフォーマンスに優れています。

 

超音波スケーラーの効果とキャビテーション作用

超音波スケーラーの効果は単なる物理的な歯石除去だけではありません。その特徴的な作用として「キャビテーション効果」と「アコースティックマイクロストリーミング効果」があります。

 

キャビテーション効果とは、振動するチップが水と接触して数千の小さな真空気泡を作り出し、これが弾ける際に生じる強い力が歯と組織面に衝突する現象です。この現象は瞬時に数万回繰り返され、気泡によって発生する振動波が細菌の細胞壁を引き裂き、細菌を破壊します。
アコースティックマイクロストリーミング効果は、振動するインスツルメントチップによって生じた持続的な水流が、閉鎖空間である歯周ポケット内で起こる渦巻のことです。この激しい渦巻の流れによって、バイオフィルム(プラーク)を破壊する効果があります。
これらの効果により、超音波スケーラーは以下のような利点を持っています。

  • 歯石除去の効率化
  • プラーク除去効果
  • 根分岐部へのアクセス性向上
  • 歯周ポケット内の洗浄(イリゲーション)
  • 殺菌効果

特に注目すべき点として、チップが直接触れていない部分のバイオフィルムも破壊できるという特性があります。これは手用スケーラーにはない大きなメリットです。

 

超音波スケーラーの効果に関する詳細情報

超音波スケーラー用チップの選択と適応症

超音波スケーラーの効果を最大限に引き出すためには、適切なチップの選択が重要です。チップは使用目的や部位によって様々な種類があります。

 

主な超音波スケーラー用チップの種類:

  • スケーリング用チップ:#GS1、2、3、4、5、6など

    歯肉縁上の歯石や浅いポケット内の歯石除去に適しています。

     

  • ペリオ用チップ:ST-G1~ST-G8、ST-G9、ST-G10など

    深い歯周ポケット内の歯石除去に適しています。細径で、深部へのアクセスが容易です。

     

  • インプラント専用チップ:インプラントプロテクトなど

    チタン製インプラント表面を傷つけずに清掃できる特殊なチップです。

     

  • 根分岐部用チップ:特殊な角度や形状を持ち、根分岐部へのアクセスを可能にします。

チップ選択の際のポイント。

  1. 治療部位(前歯部、臼歯部、根分岐部など)
  2. ポケットの深さ
  3. 歯石の量と硬さ
  4. 患者の状態(知覚過敏の有無など)

適切なチップを選択することで、治療効率が向上し、患者の不快感を最小限に抑えることができます。また、チップの装着時には、指を使って軽い力で回しながら先端のネジ山に装着し、最後にトルクレンチで適切な強さで締めることが重要です。過度に締めすぎるとチップが破損する恐れがあります。

 

超音波スケーラーの動かし方とテクニック

超音波スケーラーを効果的に使用するためには、適切な動かし方(モーション)を理解することが重要です。主なモーションには以下の3種類があります。

  1. スウィーピングモーション
    • 大きく横に振幅させるように動かす方法
    • 適応:歯肉縁上の歯石や浅いポケット内の歯石除去
    • 注意点:水が出る前に歯面にチップを当てると発熱し、患者に痛みが生じる可能性があるため、必ず歯面から離した状態で水が出たことを確認してから歯面に当てる
  2. ペッキングモーション
    • チップを軽く上下に動かす方法
    • 適応:深い歯周ポケット内の歯石除去
    • 特徴:ポケット内の深部にアクセスしやすい
  3. イレージングモーション
    • 消しゴムで消すように小さく円を描くように動かす方法
    • 適応:歯根面のデブライドメント(清掃)
    • 特徴:歯根面を傷つけにくい

超音波スケーラー使用時の基本テクニック。

  • チップは歯面に対して0°~15°の角度で当てる
  • 強い圧をかけずに、チップの側面を使用する
  • 一箇所に長時間留めず、常に動かし続ける
  • 注水量は適切に調整し、視野を確保する
  • パワー設定は必要最小限に調整する(特に知覚過敏がある場合)

これらのテクニックを習得することで、患者の不快感を最小限に抑えながら、効率的な歯石除去が可能になります。

 

超音波スケーラーの動かし方に関する詳細情報

超音波スケーラーの禁忌症例と安全管理

超音波スケーラーは非常に有用な機器ですが、すべての患者に使用できるわけではありません。以下のような禁忌症例があります。

  1. 伝染性疾患を有する患者
    • 肝炎、結核、HIV陽性など
    • 理由:飛沫感染拡散のリスクがある
  2. 易感染性宿主
    • 未治療の糖尿病、臓器移植後、免疫抑制状態の患者
    • 理由:日和見感染のリスクが高い
  3. 呼吸器系疾患を有する患者
    • 肺気腫、喘息など
    • 理由:感染性物質や細菌を吸引するリスクがある
  4. 心臓ペースメーカー装着患者
    • 特にマグネット式(磁歪型)超音波スケーラーは禁忌
    • ピエゾ式も原則として使用を避ける
  5. 嚥下障害や開口困難な患者
    • 多発性硬化症、筋萎縮症、筋ジストロフィー、麻痺を伴う患者
    • 理由:嚥下障害や開口困難が起こりやすい
  6. 若年者
    • 乳歯や萌出間もない永久歯を持つ患者
    • 理由:大きな歯髄腔が超音波の振動や発熱から損傷を受けやすい
  7. その他注意が必要な部位
    • 象牙質知覚過敏部位
    • ポーセレンクラウン
    • コンポジットレジン修復部位
    • 脱灰エナメル質面
    • 露出した象牙質
    • チタン製インプラント(専用チップを使用)

安全管理のポイント。

  • 適切な個人防護具(PPE)の着用
  • エアロゾル対策(口腔外バキューム等の使用)
  • チップの適切な滅菌・消毒
  • 機器の定期的なメンテナンス
  • 適切なパワー設定と注水量の調整

これらの禁忌症例を理解し、適切な安全管理を行うことで、超音波スケーラーを安全に使用することができます。

 

超音波スケーラーとハンドスケーラーの比較と併用戦略

超音波スケーラーとハンドスケーラー(手用スケーラー)はそれぞれ特徴があり、どちらが優れているというわけではなく、状況に応じて使い分けることが重要です。

 

超音波スケーラーとハンドスケーラーの比較:

特徴 超音波スケーラー ハンドスケーラー
歯石除去効率 高い(特に多量の歯石) 中程度
術者の疲労 少ない 多い
処置時間 短い 長い
触知感覚 低い 高い
根面への損傷 パワー設定により異なる 技術依存
患者の不快感 振動・音・水による不快感 圧迫感
キャビテーション効果 あり なし
細部へのアクセス チップ依存 高い
コスト 高い(初期投資) 低い
電源・設備 必要 不要

効果的な併用戦略:

  1. 初期治療(多量の歯石がある場合)
    • まず超音波スケーラーで大部分の歯石を除去
    • その後、ハンドスケーラーで残存歯石を確認しながら除去
  2. メインテナンス(少量の歯石の場合)
    • 状況に応じてどちらかを選択
    • 知覚過敏がある場合はハンドスケーラーが適していることも
  3. 部位別の使い分け
    • 前歯部:どちらも使用可能
    • 臼歯部:アクセスの難しい部位は超音波スケーラーが有利
    • 根分岐部:適切なチップを選択した超音波スケーラーが有利
    • 深いポケット:細径のチップを使用した超音波スケーラーが有利
  4. 患者の状態による使い分け
    • 禁忌症例:ハンドスケーラーを使用
    • 不安が強い患者:音や振動が少ないハンドスケーラーから開始

両者を適切に併用することで、効率的かつ効果的な歯石除去が可能になります。また、術者の技術向上のためには、両方の器具に習熟することが重要です。

 

超音波スケーラーとハンドスケーラーは「どちらか一方」ではなく「両方を状況に応じて使い分ける」という考え方が現代の歯科治療では主流となっています。それぞれの特性を理解し、患者の状態や治療部位に合わせて最適な器具を選択することが、質の高い歯周治療につながります。

 

超音波スケーラーとハンドスケーラーの比較に関する研究
以上、超音波スケーラーの種類や特徴、効果的な使用方法について解説しました。適切な超音波スケーラーの選択と使用は、効率的な歯石除去だけでなく、患者の快適性や治療効果の向上にも大きく貢献します。歯科医療従事者として、これらの知識を活かし、より質の高い歯周治療を提供していきましょう。