保税転売で申告価格を「転売後の高い価格」で出しても、税関に認められない場合があります。
保税転売とは、輸入(納税)申告前に保税蔵置場内で外国貨物を第三者に転売する取引形態です 。保税蔵置場は関税法第42条に基づき、原則2年間にわたって外国貨物の蔵置・運搬が可能な保税地域です 。通常の輸入と違い、保税転売では最終的に貨物を引き取る日本の顧客(転売先)が関税および消費税の納税義務者となります 。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04H-100301.html)
つまり、転売した外国企業や中間業者は、日本で関税・消費税を納付しなくてよいということです。これが保税転売の大きな特徴です。
取引の流れをシンプルに整理すると次のようになります。
- 海外売主(A社)→ 国内輸入者(B社):本邦到着を目的とした売買契約
- B社が保税蔵置場内でC社(第三者)に貨物を転売
- C社が輸入申告を行い、関税・消費税を納付して貨物を引き取る
この3者構造が保税転売の基本形です 。通関業従事者として関わる機会が増えているスキームだからこそ、申告価格の根拠を正確に理解しておくことが重要です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/hyokajirei/hyokajirei4110057.pdf)
保税転売後の価格(C社がB社に支払った金額)ではなく、転売前の価格(B社がA社に支払った金額)が申告価格の基準となります。これは、関税定率法基本通達4-1(2)ハに明示されています 。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04H-100301.html)
どういうことでしょうか?
関税評価の原則は「現実に当該貨物が本邦に到着することとなった売買」の価格を使うというものです 。保税蔵置場内での転売は、本邦到着後の「国内取引」と扱われます 。国内取引は輸入取引ではないため、関税評価の基礎にはなりません。 kumashikaku.web.fc2(http://kumashikaku.web.fc2.com/12kazeiketeirigai.pdf)
| 売買の段階 | 売手 | 買手 | 取引の性格 | 申告価格の基礎 |
|---|---|---|---|---|
| 第1売買(転売前) | 海外A社 | 国内B社 | 輸入取引(国際取引) | ✅ 基準となる |
| 第2売買(転売後) | 国内B社 | 国内C社 | 国内取引 | ❌ 基準にならない |
転売後の価格が高くなっていても、申告価格に使えないということです。これが原則です。
ただし、例外として加算要素の扱いには注意が必要です。B社の手数料・金利相当額・輸入諸掛費用などが転売価格に含まれている場合でも、申告価格はA社とB社間の売買価格をベースに計算します 。税関への事前照会(事前教示)を活用して、自社の取引形態に合った申告方法を確認することが、リスク回避の第一歩です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/2020jirei/jizen_koukai_2020_10.pdf)
税関:保税蔵置中に転売された場合の「輸入取引」の認定(関税評価事例)
関税評価事例として、保税転売時にどの売買が「輸入取引」と認定されるかを具体的に示した税関公式PDF。申告価格の根拠を理解する上で最も権威性の高い資料の一つです。
申告価格を間違えると、税額が変わります。問題はその後です。
税関の事後調査により申告価格の誤りや加算要素の漏れが指摘された場合、不足していた税額に加えて過少申告加算税が課されます 。原則として不足税額の10%が加算されます 。たとえば不足関税額が50万円であれば、5万円が上乗せになる計算です。 aog-partners(https://aog-partners.com/hozeisoukodehokantyunobaibaitoyunyutorihiki/)
これは痛いですね。
さらに、悪質な場合は重加算税(35%または40%)となるリスクもあります。通関業従事者として依頼を受ける立場では、申告価格の根拠書類を依頼主にしっかりと確認することが、自社および顧客双方を守ることにつながります。
事後調査のリスクを減らすために確認しておくべき書類は以下のとおりです。
- 第1売買の売買契約書またはインボイス(A社→B社間)
- 第2売買(保税転売)の売買契約書または譲渡証明書類 ntl-naigai.co(https://www.ntl-naigai.co.jp/glossary/ha/post-143.html)
- 輸送費・保険料・その他加算要素の証明書類
- 必要に応じ、税関への事前照会記録
書類が揃っているかどうかが条件です。
AOGパートナーズ:保税倉庫での保管中の売買と輸入取引の特定
保税転売における輸入取引の特定と申告価格の決め方、過少申告加算税のリスクについて実務的に解説されたページです。申告書作成時の確認事項として参考にできます。
申告価格の基礎が転売前の価格だとわかっても、そこから何を加算すべきかで悩むことがあります。CIF価格(輸入港到着までの運賃・保険料込み価格)が原則です 。 kumashikaku.web.fc2(http://kumashikaku.web.fc2.com/12kazeiketeirigai.pdf)
見落とされやすい加算要素の代表例は次のとおりです。
- 輸送費(本邦到着港までの運賃)
- 保険料(輸送中の積荷保険)
- B社が負担した輸入諸掛費用(一定の条件下で加算対象) customs.go(https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/2020jirei/jizen_koukai_2020_10.pdf)
- 売手に間接的に支払われる金額(コミッションや仲介料など)
ここで重要なのは、B社がA社から購入した際のインボイス価格がFOB(本船渡し)条件だった場合、そこに本邦到着までの運賃と保険料を加えてCIF価格に換算する必要があるという点です。実務上、この換算を失念して過少申告となるケースが少なくありません。これが基本です。
また、外貨建て取引の場合は輸入申告日または申告書提出日の税関公示レートを用いて円換算を行います。為替変動によって申告価格が変わるため、日常的にレートをチェックする習慣をつけておくと実務上のミスを防ぎやすくなります。
JETRO:非居住者の輸入通関および保税貨物管理(日本)
保税転売の仕組みと申告価格の基準について、JETROが日本語でわかりやすく解説しているQ&Aページです。外国企業が関係する保税転売案件の担当時に特に参考になります。
これは意外ですね。
保税転売が認められる範囲は、一般的な貨物と輸入割当(IQ)対象品目とでは大きく異なります。水産物などの輸入割当対象品目における保税転売は、厳格な条件のもとでのみ認められます 。具体的には、「非居住者である輸出者」が「購入者未定のまま」保税蔵置場に搬入した貨物を、「輸入割当を取得している者に売却」し、その購入者が自ら輸入通関する場合のみです 。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/04_suisan/qa/06.html)
居住者同士の取引では認められません 。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/04_suisan/qa/06.html)
たとえば、国内業者Bが輸入割当対象品目を保税蔵置場で別の国内業者Cに転売した場合、輸入割当の「枠貸し」とみなされ、次年度の輸入割当申請に影響する可能性があります 。最悪の場合、「当該輸入通関分は輸入通関実績と認められず、次年度の申請ができなくなる」という制裁的効果が生じます 。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/04_suisan/qa/06.html)
通関業従事者として水産物や農産物の輸入案件に関わる際は、貨物が輸入割当対象品目かどうかを事前に確認することが欠かせません。輸入割当対象品目かどうかは経済産業省の輸入割当品目表で確認できます。
経済産業省:保税転売についてよくある質問(水産物輸入割当関連)
水産物等の輸入割当対象品目における保税転売の可否と条件について、経済産業省が公式に解説しているQ&Aページです。輸入割当制度と保税転売が交差する実務事例の確認に役立ちます。