セメントミルクを使えば使うほど、地盤が強くなるとは限りません。

セメントミルクとは、セメントと水を混ぜ合わせた液状の材料で、正式には「セメントスラリー」と呼ばれることもあります。 見た目は白っぽいミルク状の液体で、地中に注入すると時間をかけて硬化し、土や杭と一体化します。杭工事において、この材料が果たす役割は非常に重要です。 token.co(https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=00207&wdid=01)
杭工事における用途は大きく3つに分かれます。 ncic.co(https://www.ncic.co.jp/kouki/foundation/cement.html)
- 掘削液:地盤を掘削する際に孔壁の崩壊を防ぐために注入する
- 根固め液:支持層付近でセメントミルクの配合を濃くして、杭先端を強固に固定する
- 杭周固定液:杭の周囲に充填して、杭と地盤の摩擦力を高める
つまり、掘削・固定・定着の3段階すべてでセメントミルクが使われているということですね。
リフォームや建て替えの相談をする際、「杭が必要かどうか」を業者に確認するだけでなく、どの液体をどの深度に注入するかまで把握しておくと、施工後のトラブルを防ぎやすくなります。地盤調査報告書を入手して、施工図と照合するのが基本です。
セメントミルク工法は、「プレボーリング根固め工法」の代表的な種類のひとつです。 「プレ(事前に)ボーリング(穴を掘る)」という名前の通り、先に穴を掘ってから杭を建て込む方法です。打撃を使わないため、市街地でも騒音・振動が少ない点が特徴です。 token.co(https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=00207&wdid=01)
施工の流れを順番に整理すると、以下のようになります。 maeta.co(https://www.maeta.co.jp/maetaProinfo/_old/Products_info/2017_04/Pile_method_6_P04.pdf)
1. スパイラルオーガで掘削液(薄いセメントミルク)を注入しながら地盤を掘削
2. 所定の深度(支持層)に達したら根固め液に切り替えて注入
3. 支持層の土砂を掘削しながら根固め液と撹拌・混合
4. 杭周固定液に切り替え、スパイラルオーガを引き上げながら孔内に充填
5. 既製コンクリートパイルを孔内に建て込み、圧入または軽打で定着
手順が多いですね。
各ステップでセメントミルクの配合(水セメント比)が変わるため、現場での配合管理が品質を左右します。 建築基準法では、この工法の先端支持力係数はα=200と規定されており、1970年代後半から埋込み杭の代表工法として普及しました。 cbl.or(https://www.cbl.or.jp/tbtl/memoir/2020/jgs_2215-21-05.pdf)
リフォームで地盤改良が必要になった場合も同様の工法が採用されることがあります。工事前に「根固め液の注入量記録を見せてほしい」と施工業者に依頼することで、施工品質の確認につながります。
セメントミルク工法に使われる杭は、既製コンクリートパイル(PHC杭・SC杭・ST杭など)が主流です。 杭径は300mm〜600mm程度(直径30cm〜60cm)が一般的で、住宅の延べ床面積や地盤の深さによって適切なサイズを選びます。 kawanokk.co(https://kawanokk.co.jp/concrete-pile/cementmilk/)
アースオーガーヘッドの径は、杭径そのものではなく、杭径+100mm程度にする必要があります。 これは公共建築工事標準仕様書にも明記された基本ルールです。つまり、直径400mmの杭を使うなら、掘削径は500mm程度になるということです。 note(https://note.com/soda_architect/n/n1c207e249ec2)
これは意外ですね。
杭径と掘削径をほぼ同じにしてしまう施工ミスは実際に起きており、孔に杭が入らないトラブルや、杭周固定液の充填不足による支持力不足につながります。 施工深度は通常10〜30m程度で、住宅一軒あたりの支持層の深さによって工期と費用が大きく変わります。 note(https://note.com/soda_architect/n/n1c207e249ec2)
| 工法 | 適用深度 | 費用目安(住宅規模) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 表層改良工法 | 〜2m | 30〜50万円 | セメント混合で地表面を固める |
| 柱状改良工法(セメントミルク) | 2〜8m | 70〜100万円 | 直径60cmの円柱を地中に造成 |
| 鋼管杭工法 | 8〜10m以上 | 110〜140万円 | 鋼製杭を支持層まで打込み |
muramatsu-h(https://www.muramatsu-h.jp/blog/2512/)
リフォームや売却、建て替えの際に困るのが「既存杭の撤去」です。セメントミルクで根固めされた杭は、硬化後は地盤と強固に一体化しているため、単純に引き抜けません。 縁切り・引き抜き工法や削孔除去工法など、専門業者による特殊な作業が必要になります。 nikkenren(https://www.nikkenren.com/kenchiku/pdf/underground_guidline.pdf)
費用も高額です。
さらに問題になるのが産業廃棄物の扱いです。 杭を引き抜いた後、空洞部にセメントミルクを再注入して埋め戻した場合、そのセメントミルクが地中に置き残される形となり、行政から「産業廃棄物の不法投棄に当たる可能性がある」と指摘されるケースが実際に報告されています。 jsce(https://jsce.jp/pro/node/7403)
これは知らないと大きなリスクですね。
また、既存杭の撤去後に新たにセメントミルク工法で杭を施工した際、想定を大幅に上回るセメントミルク注入量が発生したケースも記録されています。 撤去後の埋め戻し不良で土中に空洞が生じていたことが原因と考えられており、既存杭撤去の際は必ず専門業者に「埋め戻し方法と量」の確認が必要です。 concom(https://concom.jp/contents/countermeasure/vol056/)
リフォームで増築・基礎補強を行う場合でも、地盤調査は原則として必要です。「以前の建築時に調査済みだから不要」と考えている方は多いですが、これは大きな思い込みです。 地盤の状態は経年変化や周辺工事の影響で変化するため、10年以上前の調査データをそのまま流用すると、必要な杭の本数や深度を見誤るリスクがあります。 muramatsu-h(https://www.muramatsu-h.jp/blog/2512/)
地盤調査の方法には以下のようなものがあります。
- スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験):住宅の地盤調査でもっとも広く使われる。費用は3〜5万円程度
- ボーリング調査:深い地層まで詳細に確認できる。費用は10〜30万円程度
- 表面波探査法:振動を使って地盤の硬さを面的に測定する比較的新しい手法
調査コストは決して安くありません。
しかし、地盤調査を省略して杭工事を行った場合、支持層に届かない「空打ち」状態になるリスクがあります。これは建物の不同沈下(傾き)を引き起こし、修繕費用が数百万円規模になることもあります。調査費用を惜しんで大きな損害を招くケースは実際に後を絶ちません。
地盤調査の結果は「地盤調査報告書」として受け取れます。セメントミルク工法を含む地盤改良工事の見積もりを複数社から取る際には、この報告書を共有して比較するのが費用を適正に判断する最善策です。
参考情報:セメントミルク工法の施工手順と支持力算定の詳細は以下のPDFで確認できます。
セメントミルク工法の施工順序・支持力算定式・適用条件(前田建設)
先端支持力係数やセメントミルク工法の研究データを確認したい場合はこちらが参考になります。
セメントミルク工法による埋込み杭の先端根固め部分の材料特性(日本建築学会)

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