新規梁を後から追加するとき、無垢材を使うと金物の耐力が保証されません。
リフォームや耐震補強の現場で「既存の柱や梁に新しい梁を追加したい」という場面は非常に多くあります。しかし従来の方法では、建物を一旦ジャッキアップしてほぞ加工を行うなど、大掛かりな作業が必要でした。そこで登場したのが「後施工金物(梁受用)」です。
後施工金物とは、既存住宅の柱・梁に対して後から新規梁を追加接合するための専用金物です。 ボルトを使用せず、ビスとドリフトピンだけで固定できる構造になっており、手順さえ守れば大工さんが現場で比較的スムーズに施工できます。 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
代表的なメーカーはBXカネシンやダイドーハントで、それぞれ製品ラインナップや施工手順が異なります。 BXカネシンの後施工金物(梁受用)は「後施工金物1~4」の4タイプがあり、105用と120用の梁幅に対応しています。 sapj.or(https://sapj.or.jp/column20250910/)
後施工金物を正しく使うためには、「どこに使えるか」と同時に「どこには使えないか」を把握することが重要です。結論から言えば、対応範囲は思ったより広いですが、例外も存在します。
✅ 使える場面
- 既存住宅の耐震補強で梁を増設する場合
- 外壁がある側で羽子板ボルトが使えない部分
- 新築の化粧梁(ビス止めのため木材の欠損を最小限に抑えられる)
- 既存梁がない箇所に新規で梁を追加する場合
- 梁と梁を接合する場合(添え梁だけでなく)
❌ 使えない・注意が必要な場面
- 片持ち梁への使用(試験未実施のため不可) kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
- 90mm梁幅での使用(耐力未確認) kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
- ほぞ穴に埋木をした箇所への取り付け(強度不足のため不可) kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
- 新規梁に無垢材を使用する場合(集成材のみ対応) kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
「片持ち梁に使えない」というのは見落としがちなポイントです。
デッキや出窓の補強など、片持ち形状が必要な場合は別の工法を選ぶ必要があります。また、既存の梁がスギ材の場合でも、新規に追加する梁は必ずオウシュウアカマツ等の集成材を使用してください。 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
BXカネシンの後施工金物(梁受用)は1・2・3・4の4タイプがあり、接合強度と施工規模によって使い分けます。選択を間違えると耐震補強が設計通りに機能しません。これが条件です。
| タイプ | 短期基準引張耐力(kN) | 短期基準せん断耐力(kN)| メーカー希望小売価格(税抜/個) |
|--------|----------------------|----------------------|-------------------------------|
| 後施工金物1(105用) | 11.5 | 7.6 | 1,885円 |
| 後施工金物2(105用) | 13.7 | 15.2 | 3,325円 |
| 後施工金物3(105用) | 16.6 | 33.8 | 4,665円 |
| 後施工金物4(105用) | 15.7 | 45.2 | 12,300円 |
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数字で見ると、金物4のせん断耐力45.2kNは金物1の約6倍です。体重60kgの人間なら約75人分の荷重に相当するイメージで、耐力の差は非常に大きいと言えます。
後施工金物4は「せん断力のみを伝えるせん断キー」としても使用できる特殊なタイプです。 単純に「耐力が高ければ金物4を使う」のではなく、設計上どの力を負担させるかによって選択が変わります。設計者や施工者と事前に確認しておくのが原則です。 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
なお、使用するビスはCPQ-75(Mブルー)という専用品で、四角ビット(#3)を使って施工します。 この四角ビットは別売品なので、事前に用意しておくと現場での作業効率が大きく上がります。 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
後施工金物の施工手順は大きく「柱側の加工」「金物の取り付け」「梁のスライド挿入」の3段階に分かれます。手順を正確に守ることが、設計どおりの耐力を発揮させる唯一の方法です。
基本的な施工ステップ(BXカネシン・梁受用)
1. 座掘り加工:既存柱または既存梁に、専用の座掘錐(径60mm推奨、型番:28P超硬P型座掘錐)を使って座掘りを行う kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
2. スリット加工:増設する新規梁に金物を差し込むためのスリットを入れる。手鋸でも可能だが、プレカット加工を推奨 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
3. 金物の仮固定:既存材(柱・梁)に金物を当て、付属のビスCPQ-75で固定
4. 新規梁のスライド挿入:梁を横からスライドさせながら金物のスリットに差し込む sapj.or(https://sapj.or.jp/column20250910/)
5. ドリフトピン打ち込み:付属のドリフトピンを所定の位置に打ち込んで本締め
現場での意外な落とし穴として、「座掘深さを正確に守ること」があります。 加工が浅すぎると金物が浮いて密着せず、耐力が大幅に低下します。逆に深すぎると木材が割れるリスクがあります。施工前に必ず木造加工詳細図で寸法を確認してください。 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
また、合わせ梁にした場合は、既存梁と新規梁をボルトで接合する際に「木材スリットからボルト径の7倍以上離れた箇所」で接合するというルールがあります。 例えばM12ボルトなら12×7=84mm以上離す計算です。はがきの横幅(約100mm)を目安に考えると分かりやすいでしょう。 kaneshin.co(https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000452&kcd=2-12)
BXカネシン 後施工金物〈梁受用〉公式ページ(施工詳細図・FAQ掲載)
一般的なリフォーム記事では語られない視点として、後施工金物が「真壁仕上げの古民家や和室」で特に威力を発揮することが挙げられます。意外ですね。
真壁とは柱が室内に露出した日本の伝統的な壁仕組みで、石膏ボードを上から貼る大壁工法とは異なり、金物が目につきやすいという制約があります。通常の羽子板ボルトや金物は外から丸見えになるため、意匠性の観点から忌避されることが多いのです。
後施工金物(ビス止め)はスリットとビス穴の上下4箇所しか見えないため、真壁仕上げの化粧柱にも使用できます。 住宅医でもある一級建築士・塩田佳子氏は古民家改修現場でこの金物を活用し、「真壁化粧柱の場合も重宝する」と評価しています。 sapj.or(https://sapj.or.jp/column20250910/)
つまりリフォームで和室の雰囲気を残したいケースや、築50年以上の古民家耐震補強でも後施工金物は有効な選択肢になります。
また、丸太梁のように断面が大きい部材では、梁側に深いビス穴を開けるのが困難なことがあります。後施工金物はビス打ちが柱面からメインになる構造のため、梁側への加工負担を抑えられるメリットがあります。 これは使えそうです。 sapj.or(https://sapj.or.jp/column20250910/)
NPO法人住宅医協会コラム(古民家への後施工金物の活用実例、一級建築士による現場レポート)