リフォームで硬い素材を選べば安全だと思っていませんか?実は、延性が低すぎる素材を使うと地震時に突然崩壊するリスクが最大で約3倍高まります。

延性(えんせい)とは、材料を引っ張ったとき、破壊されずにぐっと伸びる性質のことです 。英語では「ductility(ダクティリティ)」と表記し、建築・工学の分野では非常に重要な概念として扱われています 。 kotobank(https://kotobank.jp/word/%E5%BB%B6%E6%80%A7-38211)
身近な例で考えると、チューインガムを両端から引っ張ったとき、ちぎれずに細く伸び続けますよね。あの現象が延性のイメージに近いです。金属の場合、分子レベルでそれに近いことが起きています。
つまり、「壊れるまでどれだけ変形できるか」が延性の本質です 。 weblio(https://www.weblio.jp/content/%C2%A0%E5%BB%B6%E6%80%A7)
延性の大きさを数値で表す代表的な指標は2つあります。
- 伸び(elongation):引っ張り後、破断した際に元の長さに対してどれだけ長くなったかの割合
- 絞り(断面縮小率):破断部の断面積が元の断面積に対してどれだけ小さくなったかの割合 r-will(http://www.r-will.com/15619531285103)
たとえば元の長さが100mmの試験片が、破断後に120mmになっていれば伸びは20%です。はがきの横幅(約148mm)くらいのスチール棒が、引っ張られてA4用紙の横幅(210mm)近くまで伸びてから断裂するイメージです。これが延性が高い状態です。
延性が高い代表的な金属は金(Au)・銀(Ag)・白金(Pt)・銅(Cu)です 。これらは柔らかく加工しやすい反面、引っ張りに対して非常にしなやかに伸びる特性を持っています。 kotobank(https://kotobank.jp/word/%E5%BB%B6%E6%80%A7-38211)
延性の対極にある性質が脆性(ぜいせい)です。脆性材料は力が加わったとき、ほとんど変形せずに亀裂が一気に走って破断します 。 jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl06/c0687.html)
わかりやすく言えば、延性はゴムのような「しなやかな壊れ方」、脆性はガラスのような「突然の破断」です。これは大きな違いですね。
リフォームでよく使われる建材を延性・脆性の観点で分類すると以下の通りです。
| 建材 | 性質 | 特徴 |
|------|------|------|
| 鉄骨(一般鋼材) | 延性材料 | 大きな塑性変形ができる。地震後も倒壊を免れやすい |
| アルミ合金(ジュラルミン等) | 延性材料 | 軽量で延性も比較的良好 |
| コンクリート(単体) | 脆性材料 | 圧縮に強いが引張に弱くひびが入りやすい |
| 鋳鉄 | 脆性材料 | 硬いが衝撃に弱く一気に割れる |
| 焼き入れしたままの炭素鋼 | 脆性材料 | 適切な焼き戻しをしないと脆くなる jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl06/c0687.html) |
コンクリートは圧縮に強く「硬くて丈夫そう」というイメージがありますが、実は単体では脆性材料に分類されます 。だから鉄筋を組み合わせて「鉄筋コンクリート(RC)」にするわけです。鉄筋(延性材料)を入れることでコンクリートの弱点を補い、全体の延性を高めているのです 。 songchengroup(https://www.songchengroup.com/ja/how-does-rebar-enhance-the-durability-of-concrete-structures)
これは使えそうです。
リフォームで壁・柱・梁の補強を検討するとき、単に「硬い素材」を選ぶのではなく、「延性があるか脆性か」という視点で比較することが重要です。特に耐震リフォームでは、この違いが建物の安全性を大きく左右します。
地震のとき、建物には水平方向の大きな力が繰り返し加わります。この力を「いかに吸収して逃がすか」が耐震性の核心です。
延性が高い材料は、力を受けると塑性変形(元に戻らない変形)しながらエネルギーを吸収します 。変形することで「じわじわ力を逃がす」のです。 study-z(https://study-z.net/100039190)
これを「粘り強さ」と表現することもあります。
一方、延性の低い脆性材料は変形する前に亀裂が入って一気に壊れるため、エネルギーを吸収できません。東京大学地震研究所などの研究でも、鉄骨造の建物が延性を確保しているほど倒壊確率が下がることが確認されています。
延性という考え方が地震設計に応用された建物では「制振ダンパー」という装置も使われています。竹中工務店とNIMS(物質・材料研究機構)が共同開発したFe-Mn-Si系新合金制振ダンパーは、一般的な鋼材の約10倍の疲労耐久性を持ちつつ延性にも優れており、長周期地震動にも対応できると発表されています 。 plant.and-pro(https://plant.and-pro.jp/news/3280/)
竹中工務店・NIMS:疲労耐久性が約10倍の新合金制振ダンパー開発(建設業界ニュース)
上記リンクでは、延性に優れた新合金を使った制振ダンパーの具体的な性能や、長周期地震動への対策について詳しく解説されています。耐震リフォームを検討している方には参考になる技術情報です。
延性を考えた耐震リフォームとして代表的な工法には「制振補強」があります。柱と梁の接合部に制振ダンパーを設置することで、建物全体のエネルギー吸収能力を高めます。費用は一般的な木造住宅の場合で数十万円〜100万円程度と幅がありますが、免震装置よりも低コストで実施できるケースが多いです。
「延性が高い素材を選びたい」と思っても、カタログや仕様書のどこを見ればいいか迷うことがあります。確認すべき指標が「伸び」と「絞り」です。
伸び(%) は引張試験後の延び量を元の長さに対するパーセントで表したものです 。たとえば軟鋼(SS400)の伸びは一般に21%以上が規格値とされています。 weblio(https://www.weblio.jp/content/%C2%A0%E5%BB%B6%E6%80%A7)
絞り(断面縮小率 φ) は次の計算式で求められます。
\ \varphi = \frac{A - A'}{A} \times 100 \, (\%) \
ここでAは元の断面積、A'は破断後の最小断面積です 。値が大きいほど延性が高いことを意味します。 r-will(http://www.r-will.com/15619531285103)
純金属は一般に延性が大きく、合金になると組成によって大きく変わります 。リフォームで使用される鉄骨材料の場合、JIS規格に基づく引張試験で伸び・絞りが規定値以上であることが確認されています。 study-z(https://study-z.net/100039190)
建材の仕様書やJIS規格証明書には必ずこれらの数値が記載されています。リフォームの業者に見積もりを依頼するとき「使用する鉄骨材のJIS規格と伸び値を教えてください」と一言確認するだけで、その業者の材料知識と信頼性を見極める参考になります。
数値の確認が基本です。
「延性」と「展性(てんせい)」は似た言葉で、まとめて「展延性(てんえんせい)」と呼ばれることもあるため、混同されがちです 。でも、この2つは力の方向が異なります。 r-will(http://www.r-will.com/15619531285103)
- 延性:材料を引っ張ったときに破壊されずに伸びる性質(引張方向への変形) alfaframe(https://alfaframe.com/mame/20416.html)
- 展性:材料を叩いたり圧縮したりしたときに薄く広がる性質(圧縮方向への変形) alfaframe(https://alfaframe.com/mame/20416.html)
金箔がわかりやすい例です。金は「延性」も「展性」も両方きわめて高い金属で、1gの金を引き延ばすと長さ約3kmのワイヤーになり(延性)、叩き伸ばすと1㎡以上の金箔にできます(展性)。これは意外ですね。
リフォームの建材で「展性」が重要になる場面は少ないですが、金属板の成形加工(薄板を曲げて形を作る板金加工など)では展性の概念が使われています。外壁のトタン板や銅板葺きの屋根などは展性を利用した加工です。
両方の性質の違いを理解しておくと、業者から「この素材は加工しやすい」と言われたとき、どういう意味の「加工しやすさ」なのかを正確に把握できるようになります。
アルファフレーム:延性と展性の違いをわかりやすく解説(今月のまめ知識 第58回)
上記リンクでは延性と展性の定義・違い・金属の具体例が図解つきでコンパクトにまとめられています。用語を正確に整理したい方はぜひ確認してみてください。
ここまで延性の基本を確認してきました。最後に「実際のリフォームで何を気をつけるべきか」を整理します。
延性の低い素材(脆性材料)を構造部材に使うと、地震などの外力で亀裂が入った瞬間に一気に破断します 。異常を発見してから対処する時間的猶予がほとんどありません。 jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl06/c0687.html)
これは痛いリスクです。
一方、延性の高い素材(延性材料)は破断に至るまでに大きな変形を伴うため、「この柱、少し曲がっているな」という状態が観察できます 。発見してから修繕や避難の時間が取れる点で、安全余裕度(セーフティマージン)が大きいのです。 jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl06/c0687.html)
具体的にリフォームで注意したい場面として以下のケースが挙げられます。
- 🏚️ 古い鋳鉄製の排水管の交換:鋳鉄は脆性材料で、長期使用により内部腐食が進むと突然割れることがあります。延性の高い塩ビ管や鋼管への交換が望ましいです。
- 🧱 無筋コンクリートブロック塀の補強・撤去:コンクリート単体は脆性材料です。鉄筋の入っていないブロック塀は地震で一気に倒壊するリスクがあります。
- 🔧 鉄骨梁・柱の溶接部確認:溶接品質が低いと接合部が脆性破壊を起こしやすくなります。専門家による検査を推奨します。
リフォームの計画段階で建材の延性について確認したい場合は、施工業者に「使用する鉄骨や補強材のJIS規格と引張試験の数値(伸び・絞り)を教えてください」と確認するのが最も確実な方法です。
延性の高い建材を使う、という選択が安全なリフォームの基礎条件です。
MISUMI技術情報:延性材料と脆性材料の違いと設計への応用
上記リンクでは延性材料・脆性材料の定義から破壊プロセスの違い、具体的な素材リストまでが整理されています。リフォームで使う金属材料の性質を調べる際の参考として活用してください。
| 項目 | 靭性型工法(例:制震ダンパー) | 強度型工法(例:耐震壁増設) |
| ------- | --------------- | ----------------- |
| 地震時の挙動 | 変形しながらエネルギー吸収 | 変形を抑えて剛性で抵抗 |
| 大地震後の建物 | 変形が残る場合あり | 変形が小さく損傷が少ない |
| 間取りへの影響 | 比較的小さい | 大きい(開口部削減の可能性) |
| 費用の目安 | ダンパー1基あたり数十万円〜 | 工事内容によるが数十〜数百万円 |
| 向いている建物 | 変形を許容できる建物 | 病院・要配慮建物など変形NGな建物 |

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